Blog

ストリーミングにおけるライブ配信広告の新時代

この記事は、2024年8月14日に公開されたものです。2025年5月26日に内容を更新しました。

近年、ライブ配信における広告は大きな変化を遂げています。より多くの視聴者が、スポーツ中継、ニュース、その他イベントを従来のTVではなく、ストリーミングサービスを利用するにつれて、広告業界もその変化に追いつくために方向転換を進めています。

ストリーミングサービスへの移り変わりは、特に、年始のスポーツライブ配信で顕著になりました。2025年1月は、「第101回箱根駅伝」や「第103回全国高校サッカー選手権大会 全国大会」などのスポーツライブコンテンツを配信したところ、1月のスポーツコンテンツ全体の再生数は、2024年と比較し約120%増加する結果となりました。

ライブ配信イベントは、明らかにマーケターにとって大きな機会を提供します。実際に、ある調査*では、ライブ配信中に配信した広告は、ブランドのイメージを向上し、オーディエンスに、より効果的にメッセージが伝わることが分かりました。

これまで、大型イベントの在庫は、アップフロントのようなリニアバイイングを介して売られていました。ストリーミングに収益化を移行し、ライブ配信の在庫をプログラマティックに解放することは、マーケターにとって大きな変化をもたらします。費用を掛けず、アップフロントの大きな制約もなく、関心の高い視聴者の注意を引き付けることができます。

近年、ストリーミングの成長とアドテクが発展した中で、どういったことが、ライブ配信時のプログラマティック広告の可能性を妨げているのでしょうか。

ライブ配信時のプログラマティック広告の課題

  1. ライブ配信の在庫に関するシグナリング:ライブ配信中にプログラマティック広告を配信する際の大きな課題の一つに、他のトラフィックからの在庫を見分けるシグナルが十分でないことがあります。Open RTBコンテンツオブジェクトにおける、ライブ配信のアトリビューションは、コンテンツがライブ配信されていることをシグナリングするために使用されます。しかし、事前に録画された番組と、ライブ、リアルタイムのコンテンツと区別するには不十分です。例えば、時間が設定されていないコマーシャル枠があるライブ配信のスポーツ試合、または授賞式には、個別のトラフィックパターンや要件があります。

    試合前の番組やレッドカーペットを網羅した番組などライブイベントに関連する、イベント開始前のコンテンツは、他のライブ配信の在庫との価値が異なるため正確なシグナリングが必要です。

    このようなシグナリングは、ライブ配信の在庫を特定するために非常に重要であり、メディアバイヤーはキャンペーンを効果的に調整し、さまざまな入札最適化プロセスを適用できるようになります。新しいフィールドを標準化するために、OpenRTBの仕様を改善することは、重要な起点です。

  2. インフラの拡張性:インフラは、ライブ配信イベント中の膨大な広告リクエストに対応できなければいけません。ライブイベント、特にスポーツの決勝戦や大きな政治討論のような人気のあるイベントは、視聴者が急増し、広告リクエストが高騰する可能性があります。プログラマティックのインフラ*が、遅延や不具合なくデマンドに対応できるよう拡張することは、スムーズな視聴者体験を維持し、広告収入を最大化するために不可欠です。
  3. 迅速な有効化と予算のペーシング:ライブ配信イベントは、視聴者数の急増や急なコマーシャル枠の発生が、いつでも起こることから、基本的に変動的で予測が難しいとされています。バイヤーは、エンゲージメントが高い瞬間を逃がさないよう、リアルタイムでキャンペーンを実施し、調整しなければいけません。広告クリエイティブは、事前に準備、承認され、すぐに利用できる状態でなければ、ブランドは、ライブ配信中の機会を逃してしまう可能性があります。
  4. 幅広い収益化戦略をサポート:ライブイベントのストリーミングには、様々なメディア企業やバイヤーのニーズに対応する柔軟な収益化戦略*が必要です。従来のTV形式のシェア・オブ・ボイス(SOV)バイイングは、バイヤーが関心の高い視聴者のシェアを保証するものでしたが、ターゲティング広告のためにデータを活用する、的確にリーチ可能な購買方法と併用できなければいけません。この双方的なアプローチは、広範囲にリーチするキャンペーンとターゲティングされたリアルタイム広告の両方に対応することで、収益機会を最大化できます。

今後の方針:拡張可能なソリューションに向けた連携

ライブイベントの広告のさまざまな方法を紹介する単発の導入は成功していますが、プログラマティック ・ストリーミングTVで実際に拡張可能なソリューションを実現するには、業界が一丸となり取り組む必要があります。 一部の大手企業はすでに独自のテクノロジーに投資していますが、視聴者を含むすべての関係者にメリットをもたらすには、パブリッシャーからバイヤー、アドテクプロバイダーまでサプライチェーン全体で協力的なアプローチが必要です。

断片的なソリューションの現状は、標準化と相互運用性の必要性を際立たせています。業界全体の標準とベストプラクティスは、プロセスを簡易化するだけでなく、異なるプラットフォーム間とテクノロジーがスムーズに機能することを確実にしてくれます。このコラボレーションは、プログラマティック広告の効率性と効果を向上するだけでなく、ライブ配信という未知の領域の発展と成長を促進します。

率先した取り組み:継続的な試みと行動喚起

IAB Tech Lab Ad Break Management Working Groupのリーダーシップグループの一員として、Index Exchangeはプログラマティック業界の複数の関係者と協力して、ライブ配信時の広告配信を標準化、最適化するための提案をまとめたLive Event Ad Playbook (LEAP・ライブ配信広告プレイブック)の作成に取り組んでいます。

プログラマティック広告環境におけるライブ配信広告の課題の対処と改善に取り組むため、既にいくつかの戦略を実行しています。

  • 現在進行中の取り組み:現在、OpenRTB2.6の仕様は、content.data.cids[]*フィールドに対応しており、ストリーミングのパブリッシャーが、エピソード、試合、イベント名などをテキスト形式で公表することなく構造化識別子を共有できます。これらのID(識別子)は、パブリッシャーがキーシグナルを開示する方法をコントロール可能にし、バイヤーはコンテクストに沿った決断を可能にします。

    パブリッシャーが、コンテンツが録画かライブか、ライブ配信されたを明示する方法を導入するOpenRTB2.6コンテンツオブジェクトを更新する提案書を共同で作成します。 
  • データ共有方法を改善:LEAPが、ほぼリアルタイムでストリーミングを同時処理するAPIを導入し、ストリーミングのパブリッシャーが、許可されたテック企業と一時的にライブ配信状況を共有できるようになりました。合計視聴者数、詳細な地理情報、イベントごとのメタデータを共有することにより、実際のデマンドに応じてパートナー企業がインフラの制限や入札戦略を調整できます。
  • 入札の事前取得を標準化:現在、ライブ配信イベント向けの広告を事前に取得するのが一般的ですが、エコシステム内でのアプローチは様々です。この提案は、ベストプラクティスを統一し、リアルタイムと事前取得した入札リクエストを識別するシグナリング、フィードバックおよび落札・不落を通知する仕組みを導入することを目標としています。これらのシグナルは、リクエスト急増時およびQPS過負荷時に、DSPが予算のペーシングやフリクエンシーキャップを管理できるようにします。
  • クリエイティブの互換性を統一:クリエイティブの読み込みに対処するため、ライブ配信するイベント開始前に、事前にクリエイティブを登録する共通の仕組みを開発中です。これにより、SSP、広告サーバー、SSAIプロバイダーが監査、トランスコード、事前にクリエイティブをキャッシュする時間を提供し、コマーシャルが発生した際に再生可能な状態にします。

協力し合うことで、このような要素が技術的な基礎を築き、安定性の向上、収益の最大化、ライブ配信エクスペリエンスを改善します。このワーキンググループでは、それぞれの状況に応じたソリューションを開発するため、ライブ配信における広告配信に関する知識や見解を共有するよう呼びかけています。

連携とイノベーションを通じて大きな課題に取り組むことで、業界として、視聴者のライブストリーミング体験を向上させ、マーケターとメディア企業の双方に大きな価値を提供する、スケーラブルなソリューションを開発できます。

*リンク先は英語のページです。

ストリーミングTVのプログラマティック広告について、Index Explainsをぜひご覧ください。また、ライブ配信広告のための新しい業界標準の作成にご興味をお持ちの場合は、お気軽にお問い合わせください。

Catherine Cho

Catherine Cho

リードプロダクトマネージャー

キャサリン・チョー(Catherine Cho)は、Index Exchangeのリードプロダクトマネージャーで、多くのストリーミングTV製品の開発を担当しています。ストリーミング業界とコネクテッドTV広告市場で豊富な経験を持つキャサリンは現在、ベストプラクティスの作成、プライベートマーケットプレイス(PMP)機能の拡大、新しい広告ポッド機能の開発を通して、Index ExchangeをストリーミングTV市場の先駆者として確立することに取り組んでいます。仕事以外では、年間を通してカリフォルニアでゴルフを楽しみ、夫と2人の娘と旅行に行くことが趣味です。

ブログに戻る