ストリーミングTV広告は、一般的に、広告ポッドと呼ばれる一連の広告枠(コマーシャルブレイク中に連続して表示される複数の広告)として配信されます。これは、従来のTVコマーシャルのように、視聴者には馴染み深い配信形式です。その一方、プログラマティック環境で、この広告の構成を再現するのは長い間技術的に難しいとされてきました。その結果、一貫性のない、無駄な広告取引を生み出していました。
OpenRTB 2.6が開発される以前の広告構成では、一つの広告ポッド内の各インプレッションが、個別の入札機会(広告枠)として取引されていました。
そのため、視聴者がストリーミングTVで広告を視聴する構造と、プログラマティックでの取引方法が一致せず、バイヤーにとっては、非効率やDSPへの負荷、ストリーミングパブリッシャーにとっては収益機会の損失を招いていました。このような問題に対処するため、当社では、OpenRTB 2.6で導入されたエンドツーエンド広告ポッド(広告ポッドの構成を一貫して維持)を採用しました。これにより、ストリーミングパブリッシャーからDSPへ、広告ポッド全体の構成を伝達でき、よりスマートで効率的な取引を実現します。
課題:広告ポッドの全体構造が見えないままでの入札
今もなお、多くのDSPは、ストリーミングTVの広告枠を受け取る際に、一つの広告ポッド内の広告枠を個別のインプレッションリクエストとして受け取っています。例えば、90秒間のコマーシャル枠があるとします。「3つの広告枠が含まれた、90秒間のコマーシャル枠」という情報を含むリクエストを受け取る代わりに、DSPは、「単独の3つの広告枠」という情報のみ受け取ります。DSPが、コマーシャル枠の全体像が把握できないことで、取引の効率性が以下のように大きく損なわれています。
インフラへの負荷:各広告枠に対して個別にリクエストを受け取るため、QPS(一秒あたりの入札リクエスト数)が増加し、DSPのサーバーに不要な負担が掛かります。
広告クリエイティブの重複:広告ポッドの全体像が把握できない状態では、DSPが意図せずに、同じ広告クリエイティブをひとつのコマーシャル枠内の複数の広告枠に送信し、パブリッシャー側で重複として拒否される可能性があります。
コンテキストの欠如:広告全体の長さや広告の配置など、広告ポッドレベルの情報が不十分であると、DSPは、適切な入札判断ができず、取引の効率性やメディアの価値を損ないます。
解決策:DSP向けに設計されたエンドツーエンドの広告ポッド
こうしたシステム上の非効率に対処するため、当社は、DSP向けの広告ポッドを導入しました。これは、サプライチェーン全体で一貫して広告ポッドの構成を維持する、業界標準に基づいたアプローチです。Index Exchangeは、OpenRTB 2.6仕様策定への貢献を通し、広告ポッド型のサプライが、どのようにパッケージ化され、入札されるべきかを定義するサポートをしてきました。これにより、広告ポッドの全体像が、ストリーミングパブリッシャーからDSPまで、一貫して維持されます。その結果、従来のように複数の個別のインプレッションではなく、一つの広告ポッド内の広告枠として、DSPが必要とする情報(各広告ポッドの尺、広告の配置、広告の重複を防止するために必要な情報)をまとめて送信できるようになりました。

広告ポッドを活用しDSPが実現できること:
- QPSの削減:複数のインプレッションを一つの広告ポッドリクエストとして、まとめることにより、インフラの負荷を軽減でき、パフォーマンスを改善します。
- 入札の質を向上:広告ポッドの尺、コンテクスト、競合の広告を連続して配信することを回避など、広告ポッドレベルのメタデータを活用することで、より戦略的な入札を可能にします。
- 広告クリエイティブの重複を防止:コマーシャル枠内で広告の重複防止と、フリークエンシーキャップを制御するためのロジックが組み込まれているため、広告の品質と配信の効率性を改善します。
これにより、DSPの取引方法が、視聴者が実際にストリーミングTVを視聴する方法に沿ったものとなり、また、既にストリーミングパブリッシャーがサプライをパッケージ化する上で主流になっている方法にも一致するようになりました。
広告ポッドが、DSPにもたらす成果
広告ポッドは、広告取引を整えるだけの仕組みではありません。当社のエクスチェンジ全体で、パフォーマンス、効率性、拡張性において、着実な改善を見てきました。
1. よりスマートで透明性の高い入札:DSPは、広告ポッドレベルのデータ(尺、コンテキスト、全体の構成など)にアクセスできるため、より高い精度と信頼性をもって入札を行うことができます。
- 広告クリエイティブの重複を平均39%削減
- 勝率を最大25%向上
2. QPSを削減し、パフォーマンスを改善:広告ポッドリクエスト(複数のインプレッションをまとめたリクエスト)は、送信するリクエスト数を大幅に削減するため、DSPがより多くの入札機会に対応できる処理能力を生み出します。
- QPSを平均70%削減
- 1,000インプレッションあたりの収益(RPM)を最大5倍増加
3. サステナビリティの向上:不要なトラフィックを排除することでQPSを削減し、広告配信の効率を高めるだけでなく、二酸化炭素排出量も削減します。
- 広告選択プロセスでの二酸化炭素排出量を84%削減*
StackAdaptは、Index Exchangeの広告ポッドソリューションを迅速に採用したDSPの一つであり、以下のような大きな成果を実現しました。
「広告リクエストを個別に取引する方法から脱却し、広告ポッドレベルの透明性を取り入れることにより、インフラの負担を軽減しただけでなく、入札の品質を改善しました。さらに、よりスケーラブルなインテリジェンス・バイイングを実現する環境が整いました。」
StackAdapt インベントリ・ディベロップメント担当バイスプレジデント、グレッグ・ジョセフ(Greg Joseph)
広告枠を最大限に活用
ストリーミングパブリッシャーの間では、既に広告ポッド形式が定着しました。次は、広告ポッドによるメリットをサプライチェーン全体に拡大するタイミングです。エンドツーエンドの広告ポッド対応により、DSPは推測ではなく、十分な情報を基に取引できるようになります。
パフォーマンスの向上、コスト削減、サステナビリティの改善のいずれかが目標であるか、あるいはそのすべてであっても、広告ポッドが、少ないリソースで大きな成果を実現します。
さらにスマートで、効率的なストリーミングTVのエコシステムを共に築いていきましょう。
Index Exchangeのエンドツーエンドの広告ポッドソリューションについて、お気軽にお問い合わせください。
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