プログラマティックでブランドセーフティを担うプレイヤー

Jade Grodesky, エクスチェンジ品質シニアマネージャー
ブランドセーフティと不正防止はプログラマティック広告の基盤ですが、組織や認証、責任の在り方は複雑です。 問題が発生すると、誰が何を見逃したのかと追求されるのも珍しくありません。 それはエコシステム全体に多くのプレイヤーが存在し、それぞれ役割が異なるからです。 さらにブランドから代理店、パブリッシャーやプラットフォームに至るまで、広範なサプライチェーンを加えると、安全で信頼できる環境を維持することが共通の責任であることは明らかです。 では、どの組織が何に焦点を当てているのでしょうか? 認証は実際に何を意味するのでしょうか?

Index Exchangeでエクスチェンジ品質を担当するシニアマネージャー、ジェイド・グロデスキーが、プログラマティック環境の安全における主要なプレイヤーについて解説します。各プレイヤーが何をしているのか、どう関わり合っているのか、そして貴社がよりスマートで、安全な判断をメディアに対して下せるようになる方法を見ていきます。

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ブランドセーフな環境について

デジタル広告のエコシステムは信頼によって成り立ち、その信頼は自主規制団体、技術標準化団体、そしてテクノロジーベンダーのネットワークによって維持されています。こういった団体が連携することで、不正防止、透明性の確保、そして全体の品質向上が可能になるのです。

おそらく耳にしたことがあると思いますが、TAG、MRC、IAB、IAB Tech Lab、そして日本には、JIAAやJICDAQが存在します。これらは業界標準を策定し、ベストプラクティスを示す業界団体です。

このような団体に加えて、DoubleVerify、IAS、HUMANといったベンダーも存在します。これらの企業はトラフィックのフィルタリング、ビューアビリティの計測、不正業者の検出など、ベストプラクティスを提案する業界団体です。

IABとIAB Tech Lab

まずはインタラクティブ広告協会(IAB)と、その技術的な姉妹組織であるIAB Tech Lab*からお話ししましょう。 IABは、各地域における規制に対して企業がどう対応すべきかについて、業界としての指針を提供しています。この2つの団体は、会員企業と連携しながら、業界標準となるガイドラインの策定、リサーチの実施、法的枠組みの整備、政策提言などを行っています。

IABは業界を前進させるために重要な教育活動を行っており、デジタル広告業界全体での知識、スキル、協力関係を強化しています。 またIABは、各地域における規制への企業の対応方法について、業界としての指針を提供しています。

例えば、IAB Canadaはカナダの政治広告法に準拠するためのガイダンスを提供しました。一方、IAB UKは不健康な食品広告を禁止する政府規制について、迅速に情報を更新しました。

各地域のIAB団体は、IAB UKの「ゴールドスタンダード」のように、認証を付与する場合もあります。これは不正防止、透明性、サステナビリティへの取り組みを基準に企業を評価するものです。

IAB Tech Labは、プログラマティック広告を標準化するための技術的プロトコルを構築しています。業界関係者と協力しながら、OpenRTBプロトコルads.txtsellers.jsonSupplyChainオブジェクトといった仕様を維持・管理しています。これらの技術標準自体が直接不正を防止したりブランドセーフティを保証したりする訳ではありません。

IAB Tech Labの標準は、業界参加者のワーキンググループによって作成され、提案は一般公開され、意見を募集します。業界内の人々は策定前にフィードバックを提供できる仕組みになっています。

Tech Labによる初期の取り組みの一つは、既知のボットやスパイダーのリスト共有で、企業が、人以外によるトラフィックを識別できるようにしました。これは、今日の不正検知を支え続ける基盤的な取り組みとなっています。

JIAAとJICDAQ

日本ではJIAA、日本インタラクティブ広告協会が同様の役割を担っており、業界全体の企業と連携し、消費者保護を推進、業界標準を策定し、調査を行い教育的かつ責任ある取り組みを共有しています。

JIAAは、日本アドバタイザーズ協会や日本広告業協会と共に、JICDAQを設立しました。ブランドセーフティや無効トラフィックといった領域で、適切な業務プロセスを持つ企業を認証する組織です。グローバルなベストプラクティスに準拠しつつ、日本市場特有のニーズに合わせて運用されています。

JICDAQの注目すべき点は、エコシステム全体に対する責任を強調していることです。単に個々の企業を認証するだけでなく、他の認証を受けたパートナーとの協働を推奨しています。そうすることで、基準は一社で留まらず、サプライチェーン全体に普及し、業界全体で信頼を強化することにつながります。

MRC

次に紹介するのはMRC、Media Rating Council*です。MRCはメディア計測の正確性を保証する組織です。「ビューアビリティ」や「無効トラフィック」といった用語を耳にしたことがあるかと思いますが、それらの基準を定め、企業を監査し、効果的に測定されているかを確認しているのがMRCです。MRCはデジタルチャネルだけを扱うのではなく、テレビやラジオから屋外広告に至るまで幅広くカバーしています。

企業がビューアビリティのような分野でMRC認定を受けている場合、測定方法が検証されていることを意味します。自社のツールが正確に測定できることを認めています。これは導入やフィルタリングではなく、提示されている数値が本物であり、信頼できるものであることを保証します。

TAG

次に紹介するのは、TAG、Trustworthy Accountability Group*です。これは業界自らが設立した団体で、不正やマルウェアに対抗し、ブランドセーフティと透明性を促進しています。

企業がTAG認証を受けているということは、業界標準に適した取り組みをしているかを確認するために、第三者機関による検証を含む、徹底的な審査を受けたことを意味します。それには、不正防止、マルウェア対策、あるいはブランドセーフティに関する審査が存在します。

それは単なるマーケティング用のバッジではなく、業務上の責任ある取り組みを示します。多くの企業は一つの分野だけでなく、複数の分野で認証を受けています。TAGの認証を三つ以上保持している企業は「プラチナステータス」を獲得し、品質と安全性を多角的に保証していることを示します。

これらの基準は、決して独断で策定されません。IAB Tech Labと同様に、TAGにも会員企業が参加できるワーキンググループが存在します。このグループに参加する業界関係者は、TAGの基準を策定・改善する役割を担っています。

業界認証について

TAGマークやIAB UKのゴールドスタンダード、あるいはJICDAQといった認証は、技術的な必須条件ではありません。しかし、現在では広く浸透した信頼の証であり、企業が積極的に業界標準を遵守する姿勢を示す証になっています。

とはいえ、認証を取得していないと必ずしも取り組みが不十分という訳ではありません。費用やその他の要因から認証プロセスを受けていない場合でも、基準を満たす、あるいは上回っている企業もあります。だからこそ、認証の有無に関わらず、各パートナーがブランドセーフティや不正防止にどう取り組んでいるのかを理解するために、詳細を確認することが重要です。

DoubleVerify、IAS、HUMAN

ここからは、DoubleVerifyIntegral Ad Science(IAS)HUMANといった検証・不正防止ベンダーについて見ていきましょう。 これらの企業は基準そのものを公開しませんが、その基準を徹底するためのソリューションを作成しています。

こういった企業は、リアルタイムで無効トラフィックを検知し、広告が実際に視認可能であったかを測定し、キーワードのブロックリストやコンテキストフィルターといったブランド適合性を保証するためのツールを提供しています。一部のソリューションは入札前に適用され、広告が配信される前に不正なインプレッションを遮断します。その他のソリューションは、配信後の結果を検証し、二段階の保証を備えています。

各ベンダーのアプローチは異なりますが、目的は同じです。バイヤーやプラットフォームがメディアの品質を理解し、情報に基づいて判断できるよう支援することです。

ブランドセーフティな環境でのアプローチ

このような全ての取り組みは、より広範な法的枠組みの中で行われます。GDPRやCCPAといったプライバシー法*、地域ごとの広告規制が最低限の基準を定めています。しかしTAGやMRC、IABといった自主規制団体はさらに踏み込み、ベストプラクティスを策定し、それを推進するための仕組みを作っています。

これらのプレイヤーが連携することで、ブランドセーフティに多層的なアプローチが生まれるのです。

  • 政府が法的制約を定る
  • 業界団体は業務的・技術的な基準を高める
  • メディアバイヤー、パブリッシャー、プラットフォームがその基準を適用

また、認証を受けたパートナーと協働したり、業界標準のツールを利用したりすることが、すべてのインプレッションを完璧に保証するわけではありません。これらのソリューションは、リスクを大幅に低減し、品質を向上させますが、完璧なシステムは存在しません。

重要なのは透明性、説明責任、そして継続的な改善です。

次に認証を目にしたり、ソリューションを評価したりする際は、ぜひ一歩踏み込んで考えてみてください。確認すべきことその認証は、どの団体が発行したのか。どのエリアを対象にしているのか。単にウェブサイトに、ロゴを載せているだけでなく、企業は、標準を実務で取り入れているのか。その企業は、どのように取り組みを評価し、改善しているのか。

品質を維持するための協働的な取り組み

この分野のあらゆる団体は、標準を策定するにせよ、測定方法を定義するにせよ、あるいはそれを適用するにせよ、より安全で透明性の高い広告エコシステムを構築するうえで、明確かつ重要な役割を担っています。 誰が何をしているのかを理解することは、より良いパートナー企業を選び、不要なリスクを避け、最終的には、あらゆる取り組みにおいて、より高い品質と健全性の基準を維持することにつながります。

安全で、透明性の高いプログラマティック環境を維持するには、協力し合うことが必要です。プラットフォーム全体で高い品質基準を維持するためのIndex Exchangeの取り組みをご覧ください。
(*リンク先は英語のページです)

この動画の制作に携わった、シニアプロダクトマネージャーのジェレミー・グラント(Jeremy Grant)に感謝します。